今日もあなたを探してしまうこの感情に名前をつけるとしたら?【あどござます】
私の住んでいるマンションの隣にミニストップがあります。
国道が近いせいか、夜間は駐車場に大型トラックがたくさん並ぶ繁盛店で、店員さんも皆さんやり手なのです。
ビビッドなピンクフレームのお洒落メガネをかけた若店長に、アメフトでもやってるっぽいゴツいバイト君、そしていつも元気でおしゃべりなパートさん達。
その中に一人、年齢性別が全くわからない謎の人物「あどござます」がいました。
あどござますの人物像
あどござますというのは、私がつけたあだ名。
髪型はショートカット。男性だとしたらやや長め、女性なら短め。身長は165センチくらいでどっしりした体格。胸は… ないように見えましたけど小さいだけかもしれません。年齢は30前後に見えました。 化粧はしてません。ひげはありません。ニキビが少しありました。
女性か男性かで言ったら、6割方女性だと思います(予想です)
あだなの由来はですね、お会計の際にレジへ行くと、まず一発「あどござます↑」と言ってくれます。ありがとうございますを早口にして、語尾を強めにあげてチョイ叫ぶ感じです。
そしてカゴをレジ台に置くと「あどござます↑」、バーコードでスキャンするたびに「あどござます↑」、すべてスキャンが終わると「○○○円です!あどござます↑」、お金を渡して「あどござます↑」おつりを返しながら「あどござます↑」、あどござますに背を向けて帰ろうとすると「あどござます↑」「あどござます↑」「あどござます↑」…。
店を出ていくまで「あどござます↑」を10回以上言うのです。
なんて丁寧な接客なんだ…、というよりもやり過ぎ感ありあり(○´―`)
その間一度も顏はあげず目も合わせないあたり、もしや人見知りさんかしらと思いました。
他の店員さんがキビキビ働いている中、あどござますだけは少し動きが遅く、その分を一生懸命さでカバーしているようにも感じられ、「トロいとかウルさいとかお客さんに怒られないか」心配になってきます。
そう、私はやり過ぎあどござますと出会った日から、彼女(彼?)に心を奪われてしまったのです。
あどござますとの仲を引き裂くメガネ
ミニストップに行くたび、あどござますの姿を探しました。
お客さんが居ない時は品出しをしていて、人が並ぶとサッとレジに入る… はずなのに、あどござますの残念気味な瞬発力ではメガネ店長に敵いません。
一瞬レジに向かおうをするもメガネに先を越され、無表情でカップ麺を並び直すあどござます。
あどござますの実力は、レジ打ちをして初めて発揮されるのですよ。
店長よ、どうか察してあげてください。彼女(彼?)ほんの少しトロいだけ。
レジ打つ時はあんなにもイキイキとしていたのに、
ラ王を3つ抱えて「立てるか寝かせるか」悩んでいるあどござますは、行きつけの吉野家が閉店して仕方なしに近くのすき家へ足を運んだ、あの日の私と同じくらい暗い目をしている。
メガネが憎い。
私にあどござますを聞かせてくれないメガネなど、一生店長と呼んであげない。
あどござます捕獲計画
私はメガネを含む他の店員さんが レジ付近に居ないのを確認してから、レジに並ぶようになりました。駆けてくるのはあどござます。カウンターの扉に腰骨をガチンッとぶつけてよろめきながらも、「あっ どござます↑」お決まりのフレーズは元気いっぱい。
自分もトロい人間だから、こういう人が全力で頑張っている姿を見ると安心するというか、いつまでもこのままのあどござますでいて欲しいと思ってしまう。
それにしても「あどござます↑」がしつこくて、店を出た後も耳の奥でこだまするような感覚が残ります。イラッ。
…本当にあどござますってもらいたかったのか?
なんだかよくわからないですけど、一度始めた習慣を変えることもできず、数か月間はあどござますのファンとしてミニストップに通いました。
あどござますはどこへ消えた
ある昼下がり、牛乳を買いにミニストップへ行くとあどござますの姿はありませんでした。
今日は休みの日か…?
バイトだろうし毎日出勤しているわけでもないでしょう。それまでにも、あどござますの代わりに60代のパートさんがレジ打ちをしていたこともありました。だけどその日、なぜかピンと来たのです。
「もうあどござますには会えないかもしれない」
店長に聞いてみようか。
そもそも名前も知らないし、あどござますと私の関係は店員と客でしかないのに、個人的なことを聞いたりしたら、これから先「ちょっとストーキングな主婦」として出禁になるかもしれない。
私には子供がいる。
近所付き合いだってある。
おかしな噂がたっては、家族に申し訳なさすぎる…。
レジに明治おいしい牛乳を持っていくと、メガネが来て「さっき入荷したばっかりなんですよ。朝は売切れていて」と気さくに話しかけてきたけど、全く頭に入ってきませんでした。
やっぱり辞めたっぽい
牛乳を買いに行った日以降も、何度もミニストップへ行ってますけど一度もあどござますに出くわしていません。理由はわかりませんが、とにかく私のあどござますは、どこかへ行ってしまったのです。
私はあどござますが「好き」だったのか。
否。
これは「好き」とは別種の感情だと思います。
あえて言うなら「あどござます」になるでしょう。
今は耳の奥底にも残っていない余韻を懐かしく思いながら、ちょここのブログ「chokokoreito」第一号記事は幕を閉じます。
最後まで読んでいただき
「あどござます↑↑↑↑↑↑」